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最近の著作から 2010年度

文学部広報誌『文学部だより』の「最近の著作から」欄から文学部教員の著作を紹介します。

これまでの著作紹介

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2010年

坂崎 紫瀾 著 林原 純生 校注解説『汗血千里の駒 坂本龍馬君之伝』

坂崎 紫瀾 著 林原 純生 校注解説『汗血千里の駒 坂本龍馬君之伝』

本書は明治十六年に高知の「土陽新聞」に連載され好評を博した、最初の坂本龍馬を主人公にした小説を連載当時の挿絵を含めて翻刻し、注を加えて文庫化したもの。作者坂崎紫瀾(1853~1913)は、当時の自由民権運動に参加した高知出身の活動家にして新聞記者で、彼が龍馬と交際した人達からの聞き書きや資料をもとに龍馬の生涯と、その死後の海援隊などについて初めて小説化したのが本書となる。幕末における坂本龍馬の自由人としての活動の精神を引き継ぐものが、同時代の自由党を中心とした自由民権運動であるとし、坂本龍馬の評価と自由民権運動の意義を訴えたもので、本書は連載時から評判となり、繰り返し単行本として出版されて、今に至るまで坂本龍馬像の原点となっている。(林原 純生)

2010年11月、岩波書店

バーバラ・ピム 著 芦津 かおり 訳『よくできた女(ひと)』

バーバラ・ピム 著 芦津 かおり 訳『よくできた女(ひと)』

「二〇世紀のジェイン・オースティン」の呼び声も高い女性作家バーバラ・ピムの代表作である。舞台は食糧配給がつづく第二次世界大戦後のロンドン。三十すぎのパッとしない未婚女性ミルドレッドは、家事も得意で分別もあり、教会活動や人助けに忙しい「よくできた女」。そんな彼女の暮らすフラットの下階に、華やかで自己主張の強い美男美女の夫妻が越してきて、彼女の平穏な生活に波風が立ちはじめる。さしたる大事件も起こらぬ本小説の真骨頂は、そのなみはずれたユーモアと諷刺の感覚にあるといえよう。ごくありふれた日常や平凡な人々のなかにバカバカしさや面白み、悲哀を感知するアンテナの精度と人間理解の深さ、さらに、それらをときにユーモラスにあたたかく、ときにシニカルに突き放して描く筆の冴えにおいて、ピムの右に出る作家はそう多くあるまい。また、婚期を逃しつつある「おひとりさま」ヒロインの不安定な心のゆらぎや複雑な「乙女心」を共有するのもまた、とくに女性読者にとっては楽しい読書体験となるのではなかろうか。(芦津 かおり)

2010年11月、みすず書房

宮下 規久朗、井上 隆史 著『三島由紀夫の愛した美術』

宮下 規久朗、井上 隆史 著『三島由紀夫の愛した美術』

本書は、従来ほとんど言及されてこなかった三島由紀夫と美術というテーマに、三島由紀夫研究の権威である井上隆史氏とともに切り込んだ本である。三島由紀夫といえば、国内はもとより海外にも、あまたの読者と研究者を持つ大作家だが、意外にも視覚芸術の面から彼の作品世界へのアプローチを行った書籍は見かけない。没後40年の今年、三島文学の根幹に新たな側面から迫り、三島が紀行文やエッセイで言及した美術作品を、原文と併せてできるかぎり収録し、明快な解説によってその美学を浮き彫りにした。より深く三島を知りたい方には異色の参考書として、三島をまだよく知らない方には異色の入門書として、ぜひとも手にとっていただきたい。(宮下 規久朗)

2010年10月、新潮社

宮下 規久朗 著『裏側からみた美術史』

宮下 規久朗 著『裏側からみた美術史』

本書は、資生堂の『花椿』誌の好評連載中のエッセイ「美術史ノワール」をまとめたもの。そのときどきの興味や常日頃思っていることを綴った美術漫談であり、大学やカルチャースクールでいつも話している内容の一端である。いずれも私の興味を押し出したものであるが、生と死、聖と俗、言葉とイメージ、芸術家と人格、性と食、権力と展示、純粋美術と民衆美術など、美術史の普遍的なテーマにもふれていると思っている。美術史は画家の伝記の連なりではなく、美術作品が人の心や社会にどのように作用したかの軌跡であるからである。「指名手配写真を美術館に飾ったら、それはアート?美術史の教科書には載っていない異色の掌編20話」(オビより) (宮下 規久朗)

2010年10月、日本経済新聞出版社

宮下 規久朗 編著『不朽の名画を読み解く』

宮下 規久朗 編著『不朽の名画を読み解く』

本書は、西洋の代表的な名画を簡潔に解説し、 基本的な見方を紹介したものである。具体的には、14世紀以降の西洋絵画の父ともいえる巨匠ジョットから、現存するドイツの 画家ゲルハルト・リヒターまで70点を収録した。いずれも西洋美術史を語る上で欠かせない巨匠の屈指の名画ばかりである。「名画の理由」、「主題解説」、「名画を解体」、「画家のプロフィール」などに分けて書き、 部分図も多用して名画を多角的に分析した。解説については、私のもとで研究し、美術館学芸員として美術史学の第一線で活躍している本学卒業生3名と分担執筆し、時代の概説や語句説明、コラムなどを私が執筆して全体を統一した。(宮下 規久朗)

2010年8月、ナツメ社

ダニイル・ハルムス著 増本 浩子、ヴァレリー・グレチュコ訳『ハルムスの世界』

ダニイル・ハルムス著 増本 浩子、ヴァレリー・グレチュコ訳『ハルムスの世界』

ロシア・アヴァンギャルドの作家ダニイル・ハルムスの本邦初訳の短篇集。ハルムスは1905年にペテルブルクに生まれ、スターリンの粛清によって37歳の若さで獄死した。ハルムスの作品は、長いあいだ闇に葬られていたが、ペレストロイカによってようやく公に出版されるようになり、現在のロシアではハルムスは、最も広く読まれている二十世紀の作家のひとりである。ロシア国外でも不条理文学の先駆者として徐々に名前を知られるようになり、特にドイツやフランス、アメリカではカルト的な人気を誇っている。本書には30篇の超短篇からなるハルムスの代表作『出来事(ケース)』と、その他の短篇38篇が収められている。さまざまな新聞や雑誌に書評が出たほか、NHK・BSの「週刊ブックレビュー」でも取り上げられた。ハルムスの作品を理解する手掛かりとなるコラムと、詳細な解説付き。(増本 浩子)

2010年6月、ヴィレッジ・ブックス

ポール・ヴァレリー 著 松田浩則、中井久夫 訳『コロナ / コロニラ』

ポール・ヴァレリー 著 松田浩則、中井久夫 訳『コロナ / コロニラ』

「コロナ」は冠を、姉妹編「コロニラ」は小さな冠を意味するが、本書は『若きパルク』や『魅惑』などの詩集で知られ、しばしば地中海的知性の人などと形容されるポール・ヴァレリー(1871-1945)が、その最後の愛人ジャン・ヴォワリエことジャンヌ・ロヴィトン(1903 -1996)に宛てた手紙に添えられた詩を編纂したものである。ここでヴァレリーは、自らの名声を作り上げた象徴派的な詩法を捨てて、『わがファウスト』の秘書ルストのモデルともなった年下の愛人にむかって、tendreな(優しく柔らかい)詩を書き連ねる。それはそのまま自らの可能性の黄昏にあるヴァレリーの白鳥の歌ともなっている。この詩集は2008年にパリで出版されたが、校訂に難があったため、訳者がフランス国立図書館所蔵のマイクロフィルムをもとに校訂しなおした。精神科医・中井久夫氏との共訳。(松田 浩則)

2010年6月、みすず書房

百橋 明穂 著『古代壁画の世界』

百橋 明穂 著『古代壁画の世界』

色鮮やかで躍動的な古墳や寺院の壁画。どのような思想のもとに、誰により描 かれたのか。高松塚古墳、キトラ古墳、法隆寺金堂、上淀廃寺壁画断片などの発見の契機や、図像の意味や制作技法、画師を検証した。実作例と文献資料をもとに、歴史的背景に及ぶ詳細な分析を行って検討を深化させた。さらに美術・文化 財の保護やその歴史的環境を巡る諸問題にも言及。また古代東アジアにおける日本絵画を、歴史の中に位置づける試みを行い、東アジア文化圏における壁画文化の交流を実証する広い視野を提示した。プロローグとして「美術史と考古学」から説き起こし、本論では、第一部として古墳壁画の世界、第二部として寺院を荘厳した絵画、第三部として古代壁画を描いた人々。最終章では東アジアの壁画文化をエピローグとした。(百橋 明穂)

2010年5月、吉川弘文館

宮下 規久朗 著『ウォーホルの芸術 ―20世紀を映した鏡』

宮下 規久朗 著『ウォーホルの芸術 ―20世紀を映した鏡』

20世紀を代表する美術家であるアンディ・ウォーホル(1928‐1987)は、生前における多方面にわたる活躍やメディアへの頻繁な露出から、これまで様々な流言飛語に曇らされ、毀誉褒貶に包まれていた。しかし、1989年にニューヨーク近代美術館で大規模な個展が開催され、1994年にはアメリカにある個人美術館としては最大のアンディ・ウォーホル美術館が開館するなど、その多方面な芸術は正確に評価されつつある。「孤独なトリックスター」の実像とは-。本書は、1996年に日本で開催された大規模なウォーホル回顧展にも関わった美術史家が、ウォーホル芸術の意味と本質に迫り、それを広く美術史の中に位置づける画期的論考である(見返しの文章より)。「著者は美術史家として、作家の深みを本書で改めて問い直した。…読み進めると、画家への興味が次々にわいてくる」(日経新聞の書評より)。

2010年4月、光文社

ルートヴィッヒ・ウィトゲンシュタイン 著、羽地 亮 訳『原因と結果:哲学』

ルートヴィッヒ・ウィトゲンシュタイン 著、羽地 亮 訳『原因と結果:哲学』

ウィトゲンシュタインの『原因と結果:哲学』は、ウィトゲンシュタインの因果性についての考えを知るうえでも、また、彼の哲学観を知るうえでも重要な文献の本邦所訳です。今回の邦訳は、詳細な訳注が付与されていて、親切で分かりやすく読めます(もちろんそれでも難解ですが)。ウィトゲンシュタインの哲学に少しでも興味や関心がある方には、これらのテキストは、興味深いと思われます。第一に、「原因と結果」は、『哲学探究』の純粋な先行研究であり、第二に、「哲学」は、中期から後期のかけてのウィトゲンシュタインの哲学観を知るには格好のテキストだからです。彼の因果性についての考え方や、彼の哲学の理想像や意義を把握したい人にはお勧めです。(羽地 亮)

2010年4月、晃洋書房

弓場 紀知 編『女たちのシルクロード 美の東西交流史』

弓場 紀知 編『女たちのシルクロード 美の東西交流史』

百橋 明穂「シルクロードと古代日本 ―女性たちの道」: 大きく二つの分野に分けてシルクロードの女性たちを描写した。まず、第一部、シルクロードを旅する女性たち―冒険と悲劇―では、本当にシルクを運んだ女性―西域コータンへ嫁ぐ勇敢なる女性、シルクロードから来た女性たちー国際都市長安、西域への旅―冒険と悲劇、西域に生きる誇り高き女性たち、そして第二部では、女神たち―遙かなる旅路、シルクロードを行き交う憧れの美女たち―個性あふれる女性像、の六つのテーマに絞って、イギリスのスタインや大谷探検隊などの西域探検隊の収集した遺品や、石窟壁画、唐代陵墓壁画、さらには高松塚古墳壁画、正倉院宝物などに描かれた絵画資料を駆使して、古代シルクロード世界の女性の姿を、またシルクロードの歴史の流れの中に逞しく生きる女性像を具体的に解析した。(百橋明穂)

2010年3月、平凡社

田中 康二 著『江戸派の研究』

田中 康二 著『江戸派の研究』

江戸派とは、賀茂真淵の門弟である加藤千蔭と村田春海を双璧として、寛政初年(1789)に結成された派閥であり、和歌・和文の面ですぐれた作品を残したことにより、文学史に位置づけられている。江戸派は寛政・享和・文化の約二十年の間に、千蔭と春海を中心として活動し、近世後期都市江戸の雅の文化を創り上げた。本書は前著『村田春海の研究』(汲古書院、平成十二年十二月)の続編として執筆した。前著では本居宣長との対比により、江戸派の特色を論じたが、江戸派には宣長以外にも数多くの人々との交流があり、たくさんの書物の往来がある。そういった人的つながりや物的つながりという側面から江戸派をとらえると、これまでとは異なる像が立ち現れる。そのような人の交流と書物の往来の拠点となったという認識から本書を執筆した。第一部は主に江戸派の和歌表現を論じ、第二部は江戸派の出版の問題を扱い、第三部は主に江戸派における学説の継承の問題を扱い、第四部は江戸派を取り巻く同時代の人々を論じた。全四部の構成を通じて、交差点としての江戸派の特質を論じ、国学が有する学問体系とその同時代的特徴を析出することを目指した。(田中 康二)

2010年2月、汲古書院

『平城宮第一次大極殿の復元に関する研究3 彩色・金具』奈良文化財研究所学報第82冊

百橋 明穂「7 史料から見た大極殿小壁の彩色」:平城京遷都1300年の事業として行われている、平城京第一次大極殿の復元に関して、まず、殿内に四神・十二支像を描くとした場合の、シュミレーションを検討するものである。高松塚、キトラ古墳壁画に描かれた四神、および十二支像をもとにその歴史的可能性を検証した。また、奈良時代平城宮は文献からも詳細は不明であり、むしろ平安京大極殿や清涼殿など、平安京内裏に関する文献や、年中行事絵巻などの絵画資料からの実証が求められた。また、十二支像に関しては、中国および朝鮮の作例との相違から、むしろ日本の十二支像は仏教美術との関連性が高いと結論づけた。(百橋 明穂)

2010年2月、独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所

宮下 規久朗 著『カラヴァッジョ巡礼』

宮下 規久朗 著『カラヴァッジョ巡礼』

17世紀初頭のローマで、一世を風靡したバロック絵画の巨匠カラヴァッジョは、今年没後400年を迎え、大規模な展覧会が欧米で開催され、日本では映画も公開されている。斬新な明暗法を駆使した写実的かつ幻視的な作品は常に賛否両論を巻き起こし、さらには生来の激しい気性から殺人を犯し、逃亡生活を余儀なくされる。聖なる画家にして非道な犯罪者。その光と闇に包まれた生涯を辿りつつ、現地に遺された作品を追って旅する。この本には、カラヴァッジョだけでなく同時代の周辺の画家たちや、“カラヴァッジェスキ”と呼ばれる後継者たちの作品も併せて収録。また、絵画の展示されている空間や街の風景を写真で紹介し、美術鑑賞と旅の気分を同時に味わえる贅沢な仕上がりになっている(編集部の案内文より)。

2010年1月、新潮社

石黒 広昭・亀田 達也 編 『文化と実践:心の本質的社会性を問う』

石黒 広昭・亀田 達也 編 『文化と実践:心の本質的社会性を問う』

「文化と心」の関わりをめぐる複雑な問題は、社会科学全体の共通テーマであると同時に、心理学の領域においても、近年、強い関心を集めています。心理学におけるこの問題へのアプローチには、大きく分けて、①文化心理学、②社会・文化・歴史的(ヴィゴツキアン)アプローチ、③ゲーム論的アプローチの3つがあります。いずれのアプローチも「文化と心の複雑な相互規定関係」を解明することを目指しているものの、アプローチ間の十分なコミュニケーションは、これまでほとんど行われていません。まして、それぞれの枠組みにおける「文化」概念の位置づけや中心性、文化を維持・創出するメカニズムなどのいくつかの鍵となる論点について、互いのアプローチの異同を明らかにしようとする試みは、これまでほとんど存在しませんでした。本書は、3名の心理学者(山岸、石黒、石井)がそれぞれのアプローチを紹介した後、それらに対し別の3名の心理学者(佐伯、北山、亀田)がそれらのアプローチに対して批判的な検討を加えるといった構成になっています。本書は、心の社会性に関する最先端の知見を提供しており、その点を理解する上でも格好のテキストと言えます。(石井敬子)

2010年1月、新曜社

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