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神戸大学出版会「マンガ/漫画 MANGA -人文学の観点から-」が刊行されました
2020.5.11
本書は、神戸大学大学院人文学研究科70周年記念事業キックオフ・イベント企画として、2019年3月2日・3日の両日にわたって行われたシンポジウム『「MANGA」―人文学研究の新展開―』を元に作成しています。
さまざまなマンガがあります。古いマンガもあれば最新のマンガもあり、娯楽マンガもあれば、機能マンガもあります。紙媒体のものもあれば、ウェブマンガもあります。国内のみならず海外で受容されているマンガもあります。本書タイトルは、現代の文化において重要な位置を占めるマンガの持つ多様性や拡散性に注目して、「マンガ/漫画/MANGA」としました。本書全体をお読みいただければ、このような特質を持つマンガにアプローチしていくためには、人文学諸分野からの複合的視点が必要であることがお分かりいただけると考えています。
本書の構成は、このような視点から行われたシンポジウムのプログラムに従っています。初日の全体シンポでは、人文学研究科の油井清光教授に、青木保氏(国立新美術館館長(元文化庁長官))、竹宮惠子氏(国際マンガ研究センター長(京都精華大学元学長))、王向華氏(香港大学現代言語文化部准教授)の三氏を迎え、人文学はマンガに対して、いかなるアプローチをすべきかを議論しました(第1章)。二日目の四つのミニ・シンポでは、人文学諸分野からこの問題を具体的に検討しました(第2章から第5章)。このミニ・シンポでは、増記隆介准教授(美術史学)、梶尾文武准教授(国文学)、前川修教授(芸術学)、松田毅教授(哲学)がそれぞれ座長を務めました。また企画・運営にあたっては、鈴木義和教授(国文学)が全体の取りまとめを進めました。
人文学研究科の前身である文理学部が1949年に神戸大学に設置されて、70年になりました。発足当時、私たちの先輩は、日本の近代化の中で、基礎的な学問の探求、それを通じて養われる科学的精神の育成が軽視されてきたことを反省し、敗戦後の日本の中で、市民文化の形成のためには基礎科学である人文学の役割が重要であることを強く訴えてきました。本書は、21世紀の新たな状況の下、私たちがこのような課題にどれだけ応えることが出来たのかを問うものでもあります。ご批判をお願いする次第です。
なお、シンポ及び本書は、神戸大学機能強化経費(国立大学の機能強化―日本語教育・日本研究を中心とした実践型グローバル人材育成事業―)の成果の一つでもあります。
神戸大学大学院人文学研究科長 奥村 弘
※「マンガ/漫画 MANGA -人文学の観点から-」の「はじめ」により引用
本書の内容:http://www.org.kobe-u.ac.jp/kupress/images/09manga.pdf