文学部長からのメッセージ
神戸大学文学部の前身である文理学部は、今から三四半世紀前の第二次世界大戦後まもなく、1949年に設置されました。その第一回入学案内は、「応用的学問、職業的学問をもっぱら重視し、基礎的な学問の探求、それを通じて養われる科学的精神の育成という面を軽視してきた弊」が「敗戦後の今日においても依然として根強く学界、教育界を支配している」とし、「科学的精神を身につけた健全な市民を育成することが最も急務である」と述べ、文学部の営みの重要性を主張しています。
神戸大学文学部は、哲学、国文学、中国文学、英米文学、ドイツ文学、フランス文学、日本史学、東洋史学、西洋史学、心理学、言語学、芸術学、社会学、美術史学、地理学という、広い学問領域をカバーする15の専修から構成されています。そして、人間とは何か、人間はどのような歴史や文化を生み出してきたのか、といった、人間についての根源的な問いに関わる「古典」への視点と、グローバル化や、AIをはじめとする新たな科学技術の進展等がもたらす様々な現代的課題とを結びつけながら、教育研究を日々行っています。
文学部はまた、大学間協定、部局間協定に基づく諸大学との間をはじめ、国際的な学術交流も積極的に進めており、毎年多くの交換留学生を送り出し、受け入れています。2012年10月に始まった「神戸オックスフォード日本学プログラム」では、オックスフォード大学東洋学部日本学専攻の2年次生全員(約12名)が毎年1年間文学部で日本語・日本文化を学んでおり、文学部生との日常的な交流も行われています。
文学部は、人類の叡智の蓄積としての古典と現代的問題を結びつけて考えながら、広く人間について考えるという人文学的営為の場であり、人間がつくり上げてきた文化に対する好奇心を高め、多様な角度から人間存在の深みに光をあてる教育研究を行っています。「言葉や文化、人間の行動、歴史や社会に対する幅広い関心と好奇心を持ち、既成の価値観にとらわれることなく、自分で問題を発見し、探求していく」(「文学部アドミッションポリシー」より)皆さんと、ともに学ぶことを心から楽しみにしています。
文学部長
白鳥 義彦
(Shiratori Yoshihiko)