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博士課程後期課程のキャリアパス
人文学研究科およびその前身の文化学研究科は、これまで数多くのすぐれた研究者を輩出してきました。学位を取得してすぐに常勤のポストを得ることが必ずしも容易ではない昨今の状況を踏まえて、人文学研究科では修了生を学術推進研究員や特命助教として研究科内のさまざまなプロジェクトやセンターで雇用するなど、修了生が定職に就くまでの支援を積極的に行っています。
修了者の就職状況
■文系学部・研究科や研究所の教員・研究員
神戸大学大学院人文学研究科教授、准教授、神戸大学大学院国際文化学研究科教授、東京大学 史料編纂所教授、熊本大学文学部教授、新潟大学文学部教授、天理大学文学部教授、皇筆館大学文学部教授、倉敷芸術科学大学教授、筑波大 学現代文化系准教授、山口大学経済学部准教授、弘前大学人文学部准教授、茨城大学人文社 会科学部准教授、島根大学法文学部准教授、上智大学文学部准教授、園筆院大学文学部准教 授、立命館大学文学部准教授、龍谷大学文学部 准教授、都留文科大学准教授、京都文教大学総 合社会学部准教授、防衛大学校人文社会科学群准教授、九州産業大学国際文化学部准教授、長崎大学大学教育イノベーションセンター准教授、 追手門学院大学社会学部准教授、国際日本文化センター准教授、立命館大学映像学部講師、四天王寺大学人文社会学部講師、奈良工業高等専 門学校講師、聖カタリナ大学人間健康福祉学部講師、慶応義塾大学文学部助教、中京大学国際教養学部助教、三重大学特任講師、関西国際大学現代社会学部講師
■理系学部・研究科や研究所の教員・研究員
東海大学健康科学部准教授、川崎医療福祉大学医療福祉学部准教授、神戸市看護大学看護学部准教授、東京大学工学系研究科特任准教授、東京農工大学農学部講師、九州工業大学情報工学部講師、川崎医療福祉大 学医療福祉学部講師、理化学研究所研究員、産業技術総合研究所研究員、防災科学 技術研究所研究員、理化学研究所研究員、 玉川大学脳科学研究所研究員、Max Planck研究所研究員、株式会社JT研究員
■海外の大学の日本語、日本文学の教員(主として留学生)
北京大学東方学系(中国)、北京外国語大学講師(中国)、広州大学講師(中国)、山西大学講師(中国)、華南農業大学講師(中国)、安徽大学講師(中国)、華東理工大学講師(中国)、内蒙古大学講師(中国)、東華大学講師(中国)銘停大学助理教授(台湾)、文藻外語大学助理教授(台湾)、漢陽大学校国際文化大学日本語言語・文化学部助教授(韓国)、嶺南大学校文科大学日語日文学科副教授(韓国)、ホーチミン市経済大学講師(ベトナム)、大連外国語大学講師、南京信息工程大学文学院講師、西安外国語大学講師
■文化関係の高度な学芸員、専門職員
ユネスコ北京事務所、奈良文化財研究所、京都国立博物館、台湾国立故宮博物院、北京中央美術学院、京都市歴史資料館、岩手県立美術館、越前町織田文化歴史館、孫中山記念会、神戸華僑歴史博物館、幕末と明治の博物館、大和文筆館、例教大学宗教文化ミュージアム、下関市美術館、三木市史編纂室
■国際企業や海外の公務員(留学生)
日本三星、中国鞍山城市商業銀行、太平洋商事、甘粛省委弁公庁
修了者の活動状況
劉 天羽
西安外国語大学日本文化経済学部 講師
2021 年3月修了 神戸大学博士(文学)
私は2014 年4月に研究生として日本史学教育研究分野に入り、2017 年3月に前期課程、2021年3月に後期課程を修了しました。2021年5月から西安外国語大学(出身大学)に勤務しており、日本語の授業をしながら研究を続けています。
日本史学では教育方針として、教員、ゼミ、専攻する時代などを超え、先生方全員で学生全員を指導する体制をとっています。私もこの環境に恵まれ、先生方に公私にわたって支えられてきました。特に博論は問題関心の段階から学際的な色が強く、先生の全幅の支持と的確なアドバイスがあってはじめて成立したことを振り返ってみれば、厳しさと自由の両立ができてきる研究環境だからこそ、研究のオリジナリティーが重視され、研究者の将来へとつながったものと考えています。
研究のみならず、翻訳・通訳活動と日本語教育にも力を入れてきました。求めている人間像は研究のみで完結するものではないので、皆様のご支援のもと、独自で研究著書と論文の翻訳、人文系の国際シンポでの同時・逐次通訳、そして関空の税関という仕事現場での通訳などを必死に行いました。日本語教育は独学でしたが、方法論の模索と素材探し、そして人を指導することを通じて知見と経験を積んできました。いずれも日本語教育と日本史研究を両立させるための下準備であり、引き続き努力して参りたい。
豊かな自然を満喫することも日課でした。海岸沿いの景色(特に明石海峡大橋辺り)が好きで、散策を楽しんできました。須磨海岸から明石市二見港までの30キロの海岸線は絶好なルートなので、いつも週二回でその中から15~ 20キロを適当に選んで歩き、最後には舞子公園で夕日を見ていました。博論序章のアイディアもそのおかげで得られました。
好奇心と自分を成長させる意欲、それを助け合いの中で身につけること。そして研究との間の往復を。それが人文学研究科での七年間で辿り着いた、私にとっての「人文学」です。
古賀 高雄
東北大学研究推進・支援機構 知の創出センター特任助教/ URA・プログラムコーディネータ
2020 年3月修了 神戸大学博士(学術)
私は、2020 年3月に博士課程後期課程(哲学コース・倫理学教育分野)を修了しました。神戸大学大学院人文学研究科学術推進研究員・非常勤講師を経て、現在は、東北大学・知の創出センターにて特任助教を務めています。いわゆる研究・教育職ではなく、学内の学際プログラム・イベントの企画運営を行う仕事をしています。
哲学/倫理学と言うと、浮世離れしている、とまでは言わないまでも、ひたすら古典的文献の解釈に没頭し、その世界に沈潜していくという一般的イメージがあるのかもしれません。もちろん古典研究や文献研究は重要です。なぜなら、その緻密な検討と研究の蓄積こそが、学問としての哲学の存立を可能にしているからです。この点を重視する点において、私が学んだ人文学研究科哲学コースは、他に引けをとりません。しかしながら、哲学や倫理学の議論が、現実の具体的問題とどう切り結ぶかを考えていくことも劣らず重要です。人文学研究科で私が叩き込まれたのは、まさにそうした態度でした。
私が現在務めている東北大学知の創出センターのオフィスは、材料科学高等研究所というところにあります。隣の部屋には、何やらすごそうな実験機器がたくさん並んでいます。同僚たちも、私以外、理系で博士号をとった人たちです。話の中に化学式やら数式やらが出てくると正直お手上げですが、それでも何とか仕事ができているのは、神戸で学んだそうした態度のおかげだと思っています。
陳 秀茵
東洋大学講師
2019年3月修了 神戸大学博士(学術)
2016年に博士前期課程を修了し、2019年に博士後期課程を修了しました。現在、東洋大学にて日本語講師として勤めています。専門は現代日本語・日本語教育です。
博士後期課程では、自力で課題を切り開いて、研究の全体像を作り上げ、さらに深く追究していく力がより求められます。一回一回の学会発表に努め、一本一本の投稿論文を仕上げることによって、他人に自分の考えを伝えるスキル、参考文献を網羅する情報検索力・要約力や多様な角度から分析・考察する研究能力など、様々な力が身につきます。どのような仕事に就いても、必ず役立つと思います。
神戸大学人文学研究科では、日本国内における研究最前線の理論だけでなく、国際的な現状と課題を学ぶこともできます。例えば、D1の後期に、半年間、ドイツのハンブルク大学へ日本語教育インターンシップに行かせて頂きました。非漢字圏学習者への漢字指導方法やアクティブラーニングの仕方など、たくさん学ばせて頂きました。現在、東洋大学の国際教育センターでもヨーロッパの学生がたくさん学んでいるので、毎日の授業で、ハンブルク大学での経験が大変役に立っています。
また、大学院は厳しくて毎日忙しいとイメージしている人もいるかもしれませんが、私はたくさん思い出がある5年間を過ごしました。春は1階の共用ルームで新緑を見ながらお弁当を食べて、夏は図書館前の葉っぱのつるの下でコーヒーを飲みながら休憩して、秋は真っ赤に染まった紅葉を見ながら海を眺めて、冬は研究室の先輩・後輩と一緒にお鍋を食べに行ったりしていました。研究上、いろいろな悩みがありましたが、素晴らしい自然環境と、暖かい研究室環境に恵まれたおかげで、楽しい研究生活を送ることができました。
現在でも、神戸大学人文学研究科で学んだこと、身につけたものを活かしながら、充実した、楽しい日々を過ごしています。