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パリ・大阪・神戸三大学共同セミナー「PASSAGES PHILOSOPHIQUES VI: Online Symposium on Contemporary Philosophy in France and Japan」【開催・参加報告:大橋完太郎准教授】
2022年2月28日、人文学研究科の大学院生三名が、パリ第十大学ナンテール校哲学科と大阪大学人間科学研究科との共同セミナーに参加した。三大学の哲学・芸術学系分野が共催するこのセミナーは毎年開催され、今年で5年目を迎える。コロナウィルス感染拡大による移動制限の影響を受け、今年はオンラインでおこなわれた。
ナンテール校からは哲学科・美学を専門としているアンヌ・ソヴァナルグ教授とエリー・デューリング准教授、大阪大学からは檜垣立哉教授がコメント役を務める指導教員として参加した。神戸大学からは芸術学の大橋がコメント役として参加し、長坂研究科長や新川講師、嘉指名誉教授もオブザーバーとして参加した。
大阪大学からはフランス現代哲学と芸術の関係を論じた大学院生三名の発表があり、ついでナンテール校からは認識論哲学および情報理論の美学に関する博士課程学生二名の発表があった。神戸大学からは倫理学博士後期課程修了生の王小梅氏、芸術学博士後期課程の吉水佑奈氏、同博士前期課程の八坂隆弘氏による発表があった。
王氏の発表は戦後日本における丸山正男と吉本隆明の関係を問うたもので、戦後社会における責任問題が、高度経済成長期を経てメディア的幻想論へと変転していく思想の流れを批判的に捉えたものであった。
吉水氏の発表はフランスの演劇人アントナン・アルトーの中心概念である残酷演劇をスペクタクルという観点から捉えたもので、それまで哲学的な解釈が中心であった難解なテキストを同時代の演劇的実践として読解し、演劇制作術としての残酷演劇の姿を問い直すものであった。
八坂氏の発表はポストモダンホラー映画における恐怖の構造を考えるもので、過去のホラージャンルを引用・参照することでホラーファンの知的好奇心に訴える現代のメタ・ホラー構造において、その恐怖の質は古典的なホラーといかに異なるかを問うものであった。
いずれの発表においても、発表および発表者に対する質疑は英語ないしはフランス語で行われ、その後個別に各教授から参考となる研究や議論の展開の方向性を教わるなど、さまざまな意味で有意義な会となった。
三大学合同セミナーは哲学、美学やその他の理論的研究をおこなう若手研究者にとって、国際的な研究発表を経験し、さらに大規模な学会に備えるためのまたとない機会となっている。今後も継続して開催していきたい。
(大橋完太郎/芸術学)