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ワークショップ「華人女性の留学体験 異郷に学び、異郷を書く」
2022年3月15日、科学研究費補助金特別研究員奨励費 「清末中国人女性の海外留学についての多角的研究」を主催、神戸大学海港都市研究センター及び神戸大学現代中国研究拠点を共催として、ワークショップ「華人女性の留学体験 異郷に学び、異郷を書く」が、神戸大学人文学研究科内の会場と日本や中国各地から参加したオンライン参加者をつなぐハイブリッド形式にて開催されました。
19世紀後半から20世紀前半、それぞれ異なる時期に中国から国外に渡り、学び、創作・文筆活動を行った3人の華人女性に注目し、彼女たちの異郷での経験や、それが各々の作品にどのように反映されたかを検討しつつ「越境」について考えることを目的とした今回のワークショップでは、はじめに、司会の大東和重教授(関西学院大学)と本ワークショップ企画者である林麗婷氏 (学術振興会外国人特別研究員)より趣旨説明がなされ、その後、各3名の報告者とコメンテーターにより報告とコメントが交互に行われました(当日のプログラムはこちらです)。
羽田朝子准教授(秋田大学)による第1報告「梅娘の日本経験と童話創作」では、日中戦争前半に夫と子どもとともに日本に滞在し、主婦・学生として生活した作家梅娘が童話作品も手がけていたことが明らかにされ、彼女の子供観にどのように日本が影響したのかが検討されました。
濱田麻矢教授(神戸大学人文学研究科)による第2報告「だめんず愛のゆくえ:白薇の描いた東京」では、大正期日本に留学していた中国人学生たちの恋愛を描いた白薇の自伝的小説『悲劇生涯』を題材に、近代的「自由恋愛」に出会った中国人女性が、その経験をどのように受け止めたのかが論じられました。
林麗婷氏による第3報告「ハワイの華人を描く:金韻梅の英語創作について」では、19世紀後半に宣教師の養子となり、中国、日本、アメリカで活動した医師金韻梅が、その唯一の英語小説『家族の栄光』でハワイの華人家族を描いたことを紹介した上で、彼女が描いたテーマの意味が考察されました。
各報告に対しては、李詩琪氏(神戸大学大学院博士後期課程在籍)、宋新亜氏(大阪大学大学院博士後期課程在籍)、山本秀行教授(神戸大学人文学研究科)から、報告への補足や問題提起を含む示唆的なコメントがそれぞれ行われました。また、その後のラウンドテーブルでは、登壇者全員とフロア及びオンライン参加者との間での活発な質疑応答や意見交換がなされました。文学研究者にとどまらず、社会学や歴史学分野の参加者からも、それぞれの専門的見地から質問やコメントがなされ、議論は盛況のうちに幕を閉じました。