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メタ科学技術研究ワークショップ「予防原則を考える」

2022年3月17日(木)、神戸大学先端融合研究環メタ科学技術研究プロジェクト主催のワークショップ「予防原則を考える」がオンラインで開催されました。

メタ科学技術研究プロジェクトは、「現代社会において科学的知識とは何であり、どのようにあるべきか」を自然科学だけでなく、人文・社会科学の領域の知見も踏まえても根本的・全体的に問い直すことを目的とし、人文学研究科からも倫理創成プロジェクトの構成メンバーなどが参加してきました。

今回のワークショップでは、従来科学技術倫理や環境倫理と関連して主に論じられ、近年動物倫理や生命倫理の文脈でも議論が進んでいる「予防原則」(precautionary principle)(=「事前警戒原則」)(利益を生み出しうる新技術であっても、大きな被害を引き起こすかどうかが不確かな場合、その利用をするべきではない、という原則)をめぐる諸問題(適用基準、適用領域、意思決定の妥当性など)が様々な論点から論じられ、予防言説のより包括的な理解を得ることが目指されました。

第1部では、角松生史氏(神戸大学法学研究科)が、法学的立場から予防原則の意義と機能を水俣病問題やチクロ規制などを例として整理し、全体の議論に対するフレームワークを与えました。その後、松田毅氏(神戸大学人文学研究科)が、倫理学の観点から、「不作為」を被害の原因と位置づけ、「何もしなかった行為者」に対して責任を問うことの可能性について論じました。また、清水右郷氏(国際循環器病研究センター)は医学分野における利益相反問題への予防原則の適用可能性についての検討を行いました。

国際ワークショップとして行われた第2部では、本ワークショップのコーディネーター新川拓哉氏(神戸大学人文学研究科)が、澤井努氏(京都大学高等研究院)との共同研究として、昆虫、植物、脳内オルガノイド、AIなど、意識を持つかどうか不明確な存在への道徳的配慮をめぐる問題に対して予防原則を適用するための包括的枠組みやその有効性に関する検討を行いました。また、ジョナサン・バーチ氏(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)は、感性を持たないと考えられてきた存在に対して苦痛を与える際に予防原則に基づく手続きを適用する場合の根拠やその重要性を、自身もその作成に関わったエビ、イカ、タコなどの無脊椎動物を生きたまま料理することを禁じるイギリスの法案などに触れつつ、論じました。質疑応答では、欧米圏からの参加者も交え、それぞれの研究や関心に即した活発な議論が行われました。

プログラム概要はこちらからご覧ください。

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