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ションコイ・ガーボル教授来日講演

2022年9月、人文学研究科と科学研究費補助金特別推進研究「地域歴史資料学を機軸とした災害列島における地域存続のための地域歴史文化の創成」(代表:奥村弘 神戸大学理事)(以下、奥村科研)の招聘によりハンガリーよりエトヴェシュ・ロラーンド大学人文学部副学部長であるションコイ・ガーボル教授(ハンガリー語の慣例に従い、姓・名の順に表記)が来日し、上記招聘者主催の講演を2度にわたり実施しました。

ションコイ教授は、中・東欧の都市史や都市遺産論、文化遺産をめぐる概念史などを専門とする歴史学者であり、近年では「遺産」をキーワードに、歴史学などの学術的な領域の外部における、より大衆的・実利的な過去の捉え方や利用の仕方に注目した歴史理論的な研究にも従事しています。また、欧州委員会によって設置されている欧州遺産認証制度(the European Heritage Label)の選出委員団の団長を2022年夏まで務めるなど、ディシプリンの枠を超えた活動にも携わってきました。

第一講演「Current European Cultural Heritage Policy and the European Heritage Label—from a histrian’s perspective」

9月18日(日)に開催された第一講演「Current European Cultural Heritage Policy and the European Heritage Label—from a histrian’s perspective」(奥村科研、人文学研究科の共同開催)では、奥村理事の挨拶に続き、EUにおける「欧州遺産認証制度」の成立経緯やその理念などの概要が、日本史研究者や日本の文化財研究者、EU研究者などの聴衆に向けて、解説されました。EU発足後に導入された「欧州遺産」は、EU=欧州のアイデンティティを構築・強化することに寄与しうる歴史的・文化的な場所や事物に対して与えられる称号であり、主に国家的枠組みに基づいて認定されてきた従来の文化遺産に代わり、欧州共通の価値を体現していることがその認定の重要な決め手となることや、こうした文化遺産群がヨーロッパのアイデンティティを望ましい形で再構築するのに寄与するという捉え方など、EUにおける文化の位置づけやその中での文化遺産の役割などについての示唆に富んだ議論が展開されました。台風接近の影響により急遽ハイブリッドからオンライン開催に変更したにもかかわらず、40名近い参加者からのアクセスがあったのみならず、講演後も通訳根本峻瑠氏によるサポートも交えつつ、様々な観点からの質問やコメントが寄せられ、充実した意見交換がなされました。

第二講演「Contemporary Hungary between History and Heritage - the political uses and abuses of the past」

9月24日(土)には、ハプスブルク史研究会特別例会(奥村科研との共同開催、人文学推進インスティテュート開催協力)として第二講演「Contemporary Hungary between History and Heritage - the political uses and abuses of the past」がハイブリッド形式で開催され、ハンガリーで近年進行する過去の政治的な利用に関する議論が展開されました。ハンガリー史における「トラウマ」の一つである1956年の位置づけの変化や、近年進む首都ブダペシュトの王宮地区再建築事業における市民参加型意思決定プロセスの欠如及び建造物の「真正性」(過去の正確な復元)と「審美性」(為政者の好みや大衆受け)をめぐる議論などの紹介が行われ、現在のハンガリーにおける政府主導の過去の利用は、過去のトラウマの克服のための批判的・内省的なものではなく、実益重視の立場からなされているものであるとの見解が提示されました。質疑応答では、オンラインや対面で参加した中東欧史の専門家をはじめとする西洋史や社会学などの研究者から質問やコメントがなされ、ションコイ教授からは「ハンガリーに関するこうしたテーマに関心を持っていただける方々が日本にこんなにいたとは思ってもいませんでした」との発言が出るなど、充実した意見交換が行われました。

その他にも、ションコイ教授は日本滞在中に、人文学研究科地域連携センターの市澤哲教授、古市晃教授や人文学推進インスティテュートの市原助教らとともに、京都や奈良、神戸の文化遺産や文化施設などを訪問し、現地専門家らと歴史や文化に関わる意見交換を行いました。

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