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第21回歴史文化をめぐる地域連携協議会「自治体史編さんの現在―参加と活用の新しい取り組み―」

2023年1月21日(土)、神戸大学人文学研究科地域連携センターが、神戸大学瀧川記念学術交流会館にて、第21回歴史文化をめぐる地域連携協議会「自治体史編さんの現在―参加と活用の新しい取り組み―」を開催しました(兵庫県教育委員会、科学研究費特別推進研究「地域歴史資料学を機軸とした災害列島における地域存続のための地域歴史文化の創成」研究グループ(研究代表:奥村弘)、大学共同利用機関法人人間文化研究機構「歴史文化資料保全の大学・共同利用機関ネットワーク事業」との共催)。この協議会は今年で21回を数え、また、コロナウィルス感染拡大以来3年ぶりの対面開催となりました。

今回の会合では、地域連携センターと地域との重要な連携事業の一つでありながら、これまで協議会において中心的に取り上げられてこなかった自治体史編さんの取り組みがメインテーマに据えられ、自治体史編さんをめぐる課題と現状の取り組みの確認・共有が行われました。

奥村弘教授(神戸大学理事・副学長)、長坂一郎教授(神戸大学人文学研究科長)による開会挨拶の後、人文学研究科地域連携センター特任講師の井上舞氏により、自治体編さんをめぐる問題提起が行われ、自治体史の編さんが専門家と自治体職員の協力の下、大掛かりな調査を伴いつつ膨大な時間と労力をかけて進められているにもかかわらず、その専門的な内容や周知不足から、刊行後に地域住民による十分な活用がなされていない、という自治体史の成果の地域への還元という課題が指摘されました。

その問題提起を受けて、先進的な自治体史編さんや編さん後の史料活用を進めてきた兵庫県および大阪市の複数の自治体関係者による現場からの報告がなされました。第1報告では、尼崎市で「『尼崎市史』を読む会」を主催し、合計で約30年にわたり市民に自治体史の内容を伝える試みを続けてきた学芸員の中村光夫氏(元尼崎市立地域研究史料館)や河野未央氏(尼崎市立歴史博物館)から、自治体史や史料を活用した市民向け活動の取り組みへの振り返りと、啓蒙ではなく市民との「対話」を重視した自治体史活用の在り方、参加者の多様化への展望やオンラインの活用などの現状の課題についての報告がなされました。第2報告では、廣井愛邦氏(三木市総務部市史編さん室)が、地域住民が執筆者として参加するという住民参加型のコンセプトも組み込みつつ進行している『三木市史』編さんの取り組みを紹介しました。第3報告では、成田雅俊氏(丹波篠山市中央図書館市史編さん係)が、平成の大合併の結果成立した丹波篠山市にとって初めての市史編さん事業の企画立ち上げから現在までの歩みを、体制づくりや史料収集、市民向け啓発活動などの模様も交えつつ紹介しました。第4報告では、高橋伸拓氏(茨木市立文化財史料館)が、大阪府茨木市の市史編さん事業終了後に開設された郷土資料室の取り組みを例に、自治体史史編さんのために収集された史料の市民のための還元・活用の在り方について紹介しました。自治体史料編さんの現場側の諸報告を受けて、奥村教授が研究者の立場からコメントを行い、兵庫県における史料編さんの性格を、研究者が利用するための史料編さんから市民が利用するための史料編さんへと変化していったと指摘するとともに、今後、史料の発掘・保存・公開・歴史像の形成の過程で市民による参加や成果の共有がその都度なされていくことが重要であり、そのための新たな歴史研究のスタイルの創出が歴史研究者の側に求められているとの提言を行いました。

以上の議論を受けた全体討論(司会:市澤哲人文学研究科教授)では、住民参加型の市史編さんにおいて生じうる問題、市史編さんや史料保存を可能とする体制づくり、地域住民の中の多様なステークホルダーの立場をどのように自治体史に反映させているのか、自治体史編さんにおける日本語以外の史料の活用の可能性など、様々な観点からの質問がオーディエンスから寄せられ、登壇者との間で活発な意見交換や議論が行われました。

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