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ELSIワークショップ:科学技術とデュアルユースを考える

2023年2月24日、神戸大学人文学研究科にて、神戸大学ELSIプロジェクト(仮)・倫理創成プロジェクト主催で「ELSIワークショップ:科学技術とデュアルユースを考える」が開催され、本田康二郎氏(金沢医科大学 人間科学領域 准教授)が、「軍事研究と基礎研究―理化学研究所を題材に―」と題する講演を行いました。

本田氏は、日本における民生技術と軍事技術の関係性をめぐる思想状況を日本の科学技術行政史の観点から論じた講演の中で、現代の科学技術行政のルーツを、総力戦を背景として国家による科学技術研究の統制が強化された昭和前期の国家総動員体制(「1940年体制」)の成立期における科学技術行政の2つの潮流に見出し、宮本武之輔ら企画院・技術院の技術官僚により提唱された科学者の自由な基礎研究を批判し、国家目的に資する研究を強制する「研究動員」の思想潮流を「自由を縛り付ける」潮流、もう一つの潮流である、理化学研究所における自由な環境の下で推進される基礎研究から得られた技術を軍事に転用すること(スピンオン)を目指した大河内正敏の「科学主義工業」論を「自由を飼いならす」潮流と特徴づけ付けました。その上で、前者が戦後の科学技術庁などのテクノクラシーに、後者が日本学術会議に代表されるアカデミズムに引き継がれていったことを指摘しました。

さらに、末端の研究者とその応用者の分離の下で進められた「科学主義工業」路線の中で、理化学研究所の研究者たちが、自らの成果が何に転用されているのかに自覚的になりづらい環境にいながら、軍需産業に結果的に加担していたことに触れたのち、現在の大学が置かれた産学連携体制にもその兆候があると指摘し、研究者には、自身の研究成果が知らぬ間に軍事転用される可能性や悪用の危険性に心を配り、積極的に社会に向けてその問題点に関する議論を提起していく姿勢が望まれるとの提言を行いました。

講演後、学内の研究者や学生らも交え、分野横断的に活発な議論が交わされました。

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