史学 東洋史学専修
今後ますます重要になる東アジア世界とイスラーム世界の歴史と文化について考える。
東洋史学とは
神様になった毛沢東。
2006年、中国のある村で。
ヨーロッパを除いたユーラシア大陸の全域が東洋史学の研究対象とする地域です。そこには古来、複数の文明と宗教、多数の民族と言語が存在してきました。当専修では、二つの主軸を設定して教育カリキュラムを組んでいます。一つは、ほぼユーラシア大陸をおおうイスラーム世界であり、いま一つは我が国の歴史とも密接な関係をもつ東アジア世界です。
学生諸君はアジア全体への視野と基礎知識を養いつつ、自らの対象領域を選択しなくてはなりません。原語の文献史料に取り組めるレベルにまで到達するのは、決して容易なことではありませんが、じっくりと腰を落ち着けて勉強するのが好きな人には、逆に向いているとも言えるでしょう。そして、ユーラシアの歴史に対する理解がすすめば、一見身近に感じられる「アジア」「東洋」が私たちの「常識」とは違う「常識」を持つ世界であり、その「常識」も実に様々であることがわかってくるでしょう。東洋史を学んだあとに見えてくるアジアは、きっと今の皆さんの持っているアジア・イメージとは別のものになるはずです。
授業では
2006年、バードシャーヒー・モスク
(ラホール・パキスタン)
カリキュラム・授業内容の特色としては、中国語(古典中国語〔漢文〕と現代中国語両方を含む)、アラビア語、ペルシア語、トルコ語など、自らの興味ある分野に関する語学面での訓練を重視し、それらの言語で書かれた原史料、原書を使いこなせる学生の育成につとめている点があげられます。授業は、西アジア史、南アジア史、中国各時代史が中心ですが、そのほかの領域についても、専門知識を有する非常勤講師に担当してもらうことによって、ほぼトータルな東洋史知識が得られるように構成されています。最近の授業科目からいくつかをあげると以下のようなものがあります。
「1793年のマカートニー使節団の研究」、「中国王朝の人材登用と社会変動」、「南アジア・イスラーム社会史研究の諸問題」、「アラビア語辞書編纂史」、「『資治通鑑』講読」、「マクリージー『道の書』」。
教員の紹介
教員名 | 専門分野 |
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教授 真下 裕之 | 南アジア史、イスラーム史、インド洋海域史。 |
准教授 伊藤 隆郎 | アラブ史、イスラーム学。特にマムルーク朝時代史。 |
准教授 村井 恭子 | 中国古代史、古代東アジア国際関係史。 |
最近の卒業論文から
- 「20世紀前半中国における従軍女性」
- 「朝鮮王朝時代の医女に関する一考察」
- 「13世紀後半におけるルーム・セルジューク朝スルタンの支配の正統性」
- 「アブデュルハミト二世期(1876-1908年)におけるミュルキエ校」
- 「18世紀-19世紀前半におけるオスマン帝国の遣欧使節」
- 「9−11世紀のスィースターンにおけるアイヤール」
- 「唐代前半期西州における馬匹管理」
- 「宗教と科学のあいだ:非基督教運動から科学と人生観論争へ」
- 「北魏末における関隴地域の反乱」
- 「台湾民主化における『美麗島事件』」
卒業後は
卒業後、大学院に進学してさらに研究を続ける者の他は、就職を選んでいます。就職先は民間企業、公務員、中高教員など多岐にわたっています。
教員からのメッセージ
私たち東洋史研究室の最も大きな特徴は、東アジアと 西アジアの歴史を同時に学べることにあります。読書室の大きな長机の東側には現代中国語辞典や漢和辞典に加え、漢籍や朝鮮語文献が並び、西側にはアラビア語・ペルシャ語・トルコ語の辞書や文献が並んでおり、東西を隔てる長机はまるでユーラシア大陸の漢字圏と非漢字圏を隔てる境界のようです。1冊数万円もする貴重な現地語の辞書を奪い合いながら、学生たちはこの読書室で和気藹々と授業の予習や論文の執筆に励んでいます。みなさんも一度、読書室を覗いてみませんか。
(緒形 康)
卒業生からのメッセージ
私は昔から三国志が好きで、専門的に学んでみたいと神大文学部に入学し、東洋史学専修に入りました。そこで感じた東洋史学専修の魅力を、2つ紹介します。1つは、自分が興味のある分野を研究できる楽しさです。研究したいことがまだ定かでなくても、少人数教育体制で、先生方が懇切丁寧にサポートして下さります。もう1つは、多様な言語との出会いです。私も中国語や西アジアの言語等、多くの言語に触れられました。身につけた自らの力で史料を読むことは、他では得難い経験です。
貴方も東洋史学専修で、自ら歴史を紐解いてみませんか?
(大内望 2017年3月卒業 大阪府高校・高等部教員(地理歴史科・世界史))